環境再生につながる不耕起栽培を行うNPO法人ふるさとファーマーズが思いを寄せる「農」と「食」の未来とは

2025.01.07

※こちらの記事は、当社運営メディア「Spaceship Earth」にて実施したインタビュー内容です

NPO法人ふるさとファーマーズ代表 石井 雅俊さんインタビュー

画像提供元:ふるさとファーマーズ

石井 雅俊 1987年生まれ。神奈川県川崎市出身。大手住宅メーカー勤務などを経て、2020年3月に「ふるさとファーマーズ」発足。2020年4月から県立茅ケ崎里山公園に隣接した約1500㎡の農地で不耕起栽培を開始。2024年5月に「ふるさとファーマーズ」をNPO法人化。生産者と消費者のかけ橋となるべく、さまざまな取り組みを実施している。

introduction

画像提供元:ふるさとファーマーズ

NPO法人ふるさとファーマーズは、環境再生ができる不耕起栽培を行っているNPO法人です。

  • 安心、安全な野菜を誰もが口にできる世の中に
  • 消費者を畑へ 生産者を街へ
  • 畑からつくる日本の未来

この3つのテーマに基づいて、新しいスタイルで農業活動をしています。

さまざまな職業に就き、それぞれのバックグラウンドを背負った個性豊かなメンバーが共同で畑を所有し、農業活動を販売まで行うことにより、安心で安全な野菜を適正価格で消費者に届けています。

日本の将来を担う子供たちと若い世代をメインにして、農業体験をしながら日本農業の現況や食育に関する事柄を知ってもらう援農ボランティアも募集中です。

貴社の事業内容や理念について簡単に教えてください。

画像提供元:ふるさとファーマーズ

石井さん:

ふるさとファーマーズの活動拠点は神奈川県茅ヶ崎市北部にある畑です。この畑で農薬や化学肥料に頼ることなく、自然の循環機能を活用して農作物を育成しながら、企業研修受け入れや収穫体験といった生産者と消費者を結ぶ活動を行っています。

また、小学校で出張授業をしたり、「食」「農」「環境問題」について考える学生を主体とする団体「Jr.ファーマーズ」をサポートしたりするなど、「農」を通したさまざまな働きかけによってより良い未来を次の世代と共に作る活動にも注力しているNPO法人です。

ふるさとファーマーズの「安心、安全な野菜を誰もが口にできる世の中に」というミッションは、エコツーリズムの推進や観光とのつながりにどのような取り組みを行っているのでしょうか。

画像提供元:ふるさとファーマーズ

石井さん:

必要なのは「食」を生み出す持続可能な「農」を考えることです。

まずは多くの消費者が「農」の生産現場を“知ること”により、安心かつ安全な「食」が提供されるはずです。

その取り組みの一つとして、株式会社Familyinnさんと提携し、田舎ホームステイの企画を始めました。この企画を立てたのは、ふるさとファーマーズが100回話をするよりも、種をまいて栽培管理をして収穫するという1回の農作業一連を体験した方が、環境問題と農業問題と食の問題を深く理解することにつながるからです。

また、夜にはその日収穫した野菜を料理しつつ語り合うことにより、「農」にあるさまざまな問題の解決の入口に立てるとふるさとファーマーズは考えています。

宿泊なしでも畑にお越しいただけるので、お気軽にお問い合わせください。公式サイト上にお問い合わせ窓口があります。

地域での農業活動を通じて、観光や地域振興にどのような効果をもたらしていると感じますか?

画像提供元:ふるさとファーマーズ

石井さん:

ふるさとファーマーズがある茅ヶ崎の観光は海側が圧倒的大多数を占めているので、北部に来られる人の大半は地元の方々です。

しかし、昨今茅ヶ崎北部エリアでは環境再生型有機農業(リジェネラティブ・オーガニック)と呼ばれる不耕起栽培をスタートする若い世代が増えていて、県内だけではなく東京方面からも数多くの人たちや企業が訪れ、農作業体験を経て環境問題を学んでいます。

不耕能栽培は、耕さないことによって二酸化炭素を土壌が吸収する、生物多様性を回復させる効果を発揮するため、世界でも最先端の農法と呼ばれています。

不耕起栽培の農地が1ヘクタール(サッカーコート一面分)拡大すると、家庭から出るCo2を95世帯分吸収するというデータが確認されました。

現状のまま気候変動が続くと、どのような農法も立ち行かなくなる恐れがあります。

多くの人たちが個人でできるカーボンニュートラルの場所として注目されるようになっており、人が来る場所ではなかった農地に地域振興的な価値を生み出していると言えます。

ふるさとファーマーズの活動がSDGsの目標(特に目標2「飢餓をゼロに」や目標12「つくる責任 つかう責任」)にどのように結びついているか教えてください。

画像提供元:ふるさとファーマーズ

石井さん:

ふるさとファーマーズとSDGsの結びつきについてお話させていただきます。

目標2の「飢餓をゼロに」については、日本の自給率はカロリーベースで38%という先進国の中でも低い水準にあります。顕著にわかりやすい事例としては、先のコロナ禍において各国の保護貿易が実施された折にパスタなどの小麦粉の商品などがスーパーから姿を消すという事態になりました。

また、この先第二のコロナのような疫病流行、さらに言えば戦争などに巻き込まれる可能性もゼロではないと感じています。

現代の日本の食糧事情は薄氷の上に立っているに等しい状態なので、何か事が起これば飢餓者が出てしまう可能性があります。

現実に食料品の高騰が昨年あたりからずっと止まらないのも、黄色信号が点滅している現れです。

そして、農薬による健康被害も過去よりも判明してきています。農業には耕すイメージがあると思いますが、「農地を耕すと砂漠化に向かっていく」と土壌学者が警鐘を鳴らしています。

SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」と目標13「気候変動に具体的な対策を」にアプローチするために、ふるさとファーマーズは不耕起栽培という「無農薬」「動物性肥料不使用」「耕さない農法」にこだわって農作物を栽培しています。

エコツーリズムを通じて、環境や農業の重要性を伝えるための教育的な取り組みはありますか?

画像提供元:ふるさとファーマーズ

石井さん:

ふるさとファーマーズは、エコツーリズムを通じて、0歳からシニア世代までの多くの人たちに、まずは農作物の生産現場に来ていただきたいと考えています。昨年度は、大手スーパーマーケットのイオン労働組合(イオンリテールワーカーズユニオン)さんやまいばすけっと労働組合さんを対象に畑の勉強会を開催しました。

また、リジェネラティブ・オーガニックを推進するブランドであるドクターブロナーさんとのコラボイベントにおいては、RO農業体験イベントで多くの人たちに農業や環境の重要性について学んでいただきました。

そして、子どもの教育にも注力しており、地元の小学校の遠足や英語学童の授業や体験学習センターと4ヶ月にわたるプログラムを実施するなど、大人や子供の年齢にとらわれることなく、どんな人にも「食」と「農」が必要という思いで取り組みを実施しています。

畑を訪れる観光客が驚くようなユニークな”ななめうえな”体験プログラムや、特別に用意している取り組みはありますか?また、これから目指す連携の形についてもお聞かせください。

画像提供元:ふるさとファーマーズ

石井さん:

ふるさとファーマーズは、よくある収穫体験では環境のことや「農」「食」のことを伝えるのに不十分だととらえています。

体験してもらう前に、青空の下で座学の時間を持ち、慣行栽培が食糧問題を解決したこと、それに伴って新たな社会課題が登場したことや、本当に持続可能な「農」の在り方、そしてこれから自然や地球とどう向き合っていくのか?といった、それぞれが考えていくことがとても大切だということをお伝えした後で農作業体験をしていただく形式にしています。

そうすることにより、ただの草刈りが地球環境再生につながることが見えてきます。そのプロセスこそが本当の価値であり、あらゆる分野でその視点が大切になってくると思うのです。そういった思いも収穫物としてお持ち帰りいただけたらうれしいです。

現時点では、10校ほど学校授業の講師をさせていただいています。子供たちの心と体を作るのが「食」。各学校と今後も連携を図って、将来的にはオーガニック給食を子供たちと作る、そんな未来を目標にしています。

今後、エコツーリズムやSDGs推進の観点でどのような新たなプロジェクトや活動を計画されていますか?

画像提供元:ふるさとファーマーズ

石井さん:

現在の社会では、生産現場と消費の現場に乖離がありすぎるので、問題が深刻化していると考えています。

”社会の問題は自分の問題である”という気付きを与えてくれるのがエコツーリズムです。現場で得た種はあらゆる問題に枝葉を伸ばし、やがてはSDGsの17目標に到達できるのだと思っています。

できることは小さな一歩かもしれませんが、その背中は必ず次世代が見ています。彼らに影響するのが、今日私たちが何をしているか?ということです。

ふるさとファーマーズには「食卓のものを一つ一つ自分たちで作ってみよう」という新たなプロジェクトがあります。まずは手始めとして担い手がいない農地、資材置き場に変わりそうな農地を守っていくため、農地取得を目標にしています。

2025年もNPO法人ふるさとファーマーズにご期待いただけたらうれしいです。

まとめ

画像提供元:ふるさとファーマーズ

NPO法人ふるさとファーマーズの、日本の「食」と「農」を守っていく心を次世代につないでいきたいという強い思いが、エコツーリズムやSDGsの17種類の目標にもつながっています。

単なる農作業ではなく、自然を守っていくというふるさとファーマーズの思いを基底に農作物を作っていく姿勢が若い世代にも広がり、日本の「食」と「農」をより豊かにしていくことでしょう。

NPO法人ふるさとファーマーズ・会社概要

画像提供元:ふるさとファーマーズ

社名 NPO法人ふるさとファーマーズ
本社所在地 神奈川県茅ケ崎市中島1123-8
設立 2021年4月
代表者 石井 雅俊(イシイマサトシ)
事業内容 無農薬・無肥料の不耕起栽培(リジェネラティブ・オーガニック)
公式サイト https://furusatofarmers.wixsite.com/mysite

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