「人が森に入ることで未来を守る」緑のダム北相模の環境保全と体験活動の魅力

2025.01.30

画像提供:特定非営利活動法人 緑のダム北相模

introduction

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特定非営利活動法人「緑のダム北相模」は、神奈川県相模市緑区相模湖周辺の民有林等の森林の間伐、枝打ち、下草刈り等の森林整備をしている森林ボランティアグループです。森林整備のほか、ガーデニング、間伐材の活動など幅広い活動を行っています。

2005年には国内でボランティアグループとして初めて、国際的な森林認証 FSCのFM認証を取得しました(認証期間は2015年まで)。認証終了後の現在でも同じ基準で森づくりをしています。

本日は、中高生とともに「相模湖・若者に森づくり」の活動を行う、特定非営利活動法人 緑のダム北相模の宮村連理さんへ取材させていただきます。

宮村連理
緑のダム北相模の副理事長。本業は中学理科教師をしている。学生時代に本会の活動に参加したことをきっかけに、現在では勤務する中学校や近隣の中高生と森づくりを行っている。森林整備の仲間と協力して木を倒し、運び出すまでの現地の活動は、学校教育だけでは身につけることが難しい非認知能力も身に付く実感がある。自然の中で、慈善を楽しみながら、そういった力が向上するような活動を実施。

緑ダム北相模の事業内容や活動理念について教えてください

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宮村さん:

荒廃する人工林や放置された森林の課題に取り組むため、ボランティア活動を基盤とした森林整備、さらに間伐材を活用したものづくりを行っています。整備で生じた間伐材を活動したものづくりを通して、地域に貢献しながら、参加者に活動の機会を提供しています。

中学生からシニアまで多様な価値観、背景を持つ人々が協力し、森林破壊という「負の遺産を残さない」という理念のもと活動しています。

さらに、私たちは「森林ESD(持続可能な開発のための教育)」という新しい森林環境教育の新しい考え方や、高校生を中心に探求的な学習の支援も行っています。

また、一般社団法人東京学芸大Explayground推進機構と連携することで、ShopBotというCNCルーターを使用した教育とものづくりを融合した活動を展開しています。

「森林破壊という負の遺産を子孫に残してはならない」というミッションを、エコツーリズムの観点からどのように実現されていますか?

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宮村さん:

「森林破壊という負の遺産を子孫に残してはならない」というミッションを、エコツーリズムの視点から実現する取り組みを行っています。その中核となるのが、「森林整備」を目的とした間伐体験プログラムです。

間伐は、健康な森を維持するために不可欠な作業であり、残す木の成長を促し、森林全体を健全に保つための重要な工程です。しかし、実際には日本の多くの人工林は人手が入らず放置され、荒廃が進んでいます。

この活動は、危険が伴いますが、安全に配慮しながら20mにもおよびスギやヒノキを参加者自身の手で倒すという非日常の経験ができる活動です。

参加者が20mの木を倒した時に感じる振動や音、そして仲間と協力してやり切った時の達成感は、他の体験では得られない特別なものです。

森林整備という本来、日本人にとっては日常であったはずの活動が、今では非日常となってしまったことに寂しさを感じます。実際に体験する場を提供することで、単に知識とした間伐の必要性を学ぶだけでなく、環境問題について考える経験をすることができます。

観光客や地域住民に対して、環境保全や森林管理の重要性を伝えるためにどのような取り組みをされていますか?

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宮村さん:

観光客や地域住民に環境保全や森林管理の重要性を伝えるため、実際に体験することを重視した取り組みを行っています。

間伐体験の多くは、林業のプロやボランティアが主体で行い、参加者は見学する立場になりがちですが、本会のプログラムでは、木の大小はあっても基本的に参加者自身が木を伐る体験をしてもらいます。

実際に体験してもらうことは、単なる知識の習得に留まらず、参加者が自ら行動し、その中で気づきや学びを得ることを目的としています。

森林ESDの探求学習の考え方のなかに、「自分でやってみて、その中で気づくことがある」そのことが重要だとされています。ただ単に教えるのではなく、体験を通じて自身の価値観や考え方に結びつけてもらいたいと思っています。

緑のダム北相模の活動が特に関連しているSDGsの目標や、活動を通じて達成しようとしている成果について教えてください。

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宮村さん:

SDGsを単一の目標として行っている団体は少ないと思いますが、特に森林の場合、気候変動や陸の豊かさだけでなく、教育活動としても貢献していきたいと考えています。

また、「パートナーシップ」も重要視しています。地域だけでなく、複数の自治体や企業と連携することで、持続可能な取り組みの実現を目指しています。複数の自治体や企業が協力することで、より広い範囲での影響力を発揮し、持続可能な活動につながると思います。

地域住民や地元企業との連携はどのように行っていますか?また、その連携によって生まれた成果や課題についてお聞かせください。

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宮村さん:

高尾山の裏手に位置するフィールドを活用し、地域住民や地元企業との連携を深めながら活動を進めています。

この地域には、甲州街道沿いに本陣が残るなど、歴史的・文化的価値が高い地域資産が数多く存在します。また、農作物なども含めた地域の豊かな資源は、地域の誇りでもある一方で、観光客にその価値が十分に広まっていないという課題も抱えています。

こうした状況を改善するため、今年度は地域の拠点施設「小原の郷」を中心に、地元住民や行政と連携し、複数の体験型プログラムを実施しました。

具体的には、夏場には真夏の沢体験を実施したり、自分で伐採した間伐材を使った簡単な工作体験も行い、森林資源を活用したものづくりの楽しさを参加者に体験してもらいました。参加者からは非常に好評でした。

環境問題は重いテーマになりがちですが、それを『ななめうえ』に楽しさや魅力に変えるために工夫されていることがあれば教えてください。

画像提供:特定非営利活動法人 緑のダム北相模

宮村さん:

環境問題は、その重要性から重いテーマとして捉えられがちですが、緑のダム北相模では、それを楽しさや魅力に変えるための工夫を積極的に行っています。

特に、林業というと危険、怖いというイメージがありますが、本会の活動は、参加者が「おもしろい」「もっとやってみたい」と感じられる体験を提供することを重視しています。間伐作業は、参加者が自分自身で木を伐るという挑戦的な体験を通じて、達成感や充実感を得られる活動です。

「また切ってみたい」「もっと大きな木に挑戦したい」というリピーターの子どもたちが多いことは、この活動が楽しさややりがいを提供している証拠です。

もちろん間伐には危険が伴いますが、安全管理を徹底し「無理をしない」「ぼちぼち進める」というスタンスで進行することで、安心して挑戦できる場を提供しています。

また、環境問題を直接伝えるのではなく「楽しさ」の中にテーマを織り込む工夫もしています。二酸化炭素の吸収、水源涵養、生物多様性保全といった環境問題についても、楽しみながら学べる仕掛けを設けています。環境問題という重いテーマを、参加者自身が「楽しい」「またやりたい」と感じるポジティブな体験に変えることに挑戦していく団体であり続けたいと思っています。

エコツーリズムやSDGs達成に向けた今後の計画や、挑戦したい新たな取り組みがあれば教えてください。

画像提供:特定非営利活動法人 緑のダム北相模

宮村さん:

これまで多くの子どもたちに「人が関わることで維持される森」の重要性を伝えてきましたが、指導する側の教育や体験の機会が不足している現状を課題として捉えています。

小学校5年生の社会科で、日本中の小学生が森林の役割や人との関わりについて学ぶ内容が含まれていますが、その授業を担当する教員自体が十分な学びや体験の機会を持っていないことが実情です。

特に、東京学芸大学のような教育養成機関でも、社会科の中で森林を専門とする人材が少なく、指導の際に具体的な知識や実践的な経験が不足しがちです。

このような現状を改善するため、今後は子どもたちだけでなく指導者養成のような機会を増やしていきたいと考えています。

まとめ

画像提供:特定非営利活動法人 緑のダム北相模

緑のダム北相模は「人が関わることで維持される森」という理念の元、森林整備や間伐体験を通じて環境保全と地域活性化を目指しています。

安全に配慮した間伐体験や間伐材を活用した工作体験を提供し、楽しみながら環境を学べる場を作っています。また、森林ESD(持続可能な開発のための教育)の推進や教員を対象とした指導者養成プログラムにも注力し、次世代に向けた環境教育を実践しています。

基本情報

提供団体 特定非営利活動法人 緑のダム北相模
所在地 相模原市緑区与瀬本町12 かどや食堂内
連絡先 info@midorinodam.jp
代表者 川田 晃
公式サイト http://midorinodam.jp/index.html

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